会社社長の役割と責任

会社社長の定義と役割について

社長というと会社で一番偉い人の一般名詞のようですが、登記簿などの文書に記載する正式な名称は代表取締役です。

会社には最も身近な株式会社の他、合名会社・合資会社・合同会社などと、すでに法律が廃止されて新たに設立することはできない有限会社などがあります。

株式会社は現在取締役1名以上で設立することができますが、取締役会を設置するには3名以上の取締役と1名以上の監査役設置が不可欠です。

2005年に有限会社法が廃止されると同時に、株式会社の役員数の要件が緩和されて現在の仕組みになりましたが、それ以前は取締役3名と監査役1名を充足できない場合は有限会社になっていました。

2005年の有限会社法廃止は、廃止によってなくなる有限会社を小規模の株式会社として取り込む改正でしたが、従来からあった有限会社は強制的になくなるのではなく存続が認められています。

会社設立に必要なものは、会社の名前や本店・事業目的などさまざまですが、物理的に必要なのは資本金と役員です。

株式会社で資本を提供したのが株主で、会社は株主の所有になり、株主が経営を委任するために専任するのが取締役、それを監督する役割が監査役です。

監査役は監査が仕事なので、経営を自ら行うことはできません。

会社は定款で役員の人数を何名以上とか何名以内というように定め、取締役が複数いる場合は会社を代表する人を指定します。

社長は法律で決められている職務ではなく、会社内の役職です。

会社の基本法というべき定款では、取締役が複数いる場合はそれ以外にも会長などを決めることができること、その中で代表権を有するのが誰かを決めておきます。

 

選任までの手続きの流れ

手続きの流れとしては、株主が株主総会で取締役を選任して、取締役が1名の場合は代表取締役を選任する必要がないので自動的にその人が社長になり、取締役が複数いる場合、株主総会で選任された取締役同士の互選で決めます。

会社と安全に取引するための公示手続き、会社と取引するにあたって相手の素性を確認するために、手数料を支払って誰もが自由に閲覧できる仕組みが商業登記です。

不動産取引やお金の貸し借りなどの重要な取引では、個人の場合は印鑑証明や住民票で本人確認を行いますが、会社の場合は登記簿謄本と印鑑証明が内容を明かす手段です。

たとえば、会社の取引を決める権限がない人が第三者と勝手に取引をすることがないように、会社の意思表示は代表取締役によってなされる必要があります。

一般的な会社では代表取締役=社長ですが、法律上は社長だけど会社を代表しない場合や、そのほかにも複数の代表取締役がいる場合もあります。

名刺や会社案内などの文書には役職名としての社長が書かれていることが多いですが、実際に法律上権限を持っている人かどうかを確認する登記簿謄本では、役職名ではなく代表取締役という法律上の名前が記載されています。

経営と所有が分離されていない同族会社などでは、大株主が代表取締役を務めることが多いですが、資本を提供する株主が自ら経営はせず、経営能力がある人を選んで取締役に選任することもできます。

その場合、取締役は結果を出せれば報酬を増加したり、信任を得て再任や任期の延長をすることができますが、結果を伴わかったり、株主の意思にそぐわない場合は解任されてしまうこともあります。

 

役員としての地位と責任

つまり代表取締役は経営における最高責任者で、社内外との取引の決定権を持ちますがその権限の根源は株主からの信任です。

その点、代表取締役に限らず取締役全般は、従業員のような労働者と同等の身分保証はなく、給与も労働の対価ではなく委任の報酬です。

したがって、労働者であれば解雇権の濫用に当たるリストラに抗する権利も持っていますが、取締役は株主からの信任を失えば会社を去らなければなりません。

その反面、労働の対価である給料は労働時間やその質によって決まるのに対して、報酬は委任関係の対価なので労働時間が多いか少ないかによって決まるものではなく、出勤の義務がない非常勤だとしても経営に対する関与さえしていれば報酬を受けることができます。

このように、会社から給与をもらっている人の中でも従業員と役員は立場が異なり、従業員を無給で働かせれば労働基準法に違反しますが、役員の場合は無報酬での労働もあり得ます。

また、取締役の中には、使用人兼務役員と言って従業員と役員の立場を併せ持つ人もいます。

役員としての地位と責任を持ちながら、営業や総務・経理などの現業部門の部長を兼任する人のことを使用人兼務役員と言って、使用人の職務に対する給料と、役員の地位に対する報酬を合計してもらう事ができます。

代表取締役は会社の業務全般に対して責任があることから、代表取締役やその親族は使用人兼務役員になることはできません。

会社を代表する取締役は、その地位にあるかぎり会社の意思を決定することができますが、その役職は株主の信任が源泉であるため、大株主が代表取締役を兼任する場合はその地位は安泰です。