起業にともなう補助金や助成金

①起業する際に必要な資金面での課題

起業をする上でのネックにはいろいろなものが考えられますが、特に大きなものが資金面での不安です。

起業をすることそのものにもお金がかかりますし、まだ収入が不安定なスタートアップの段階での運転資金や設備資金の確保も経営者の頭を悩ませる課題といえます。

こうした不安があるために、せっかくすぐれたアイディアがあるにもかかわらず、実際には起業に至らないというケースも多いものです。

そこで経済産業省をはじめとする国の役所や地域の自治体、政府系の金融機関その他の団体では、こうした起業に取り組もうとしている人たちをバックアップするように補助金や助成金のメニューをいくつか用意しています。

補助金や助成金を申請するための条件はそれぞれ異なりますが、もしも条件に該当する場合には、積極的に申請をしてみて、資金面での不安をできる限り払拭しておくのが賢い方法です。

たとえば経済産業省の外局にあたる中小企業庁で取り扱っている補助金のなかでも有名なものに創業補助金が挙げられます。

これは新たな需要や雇用の創出を目的として、これから事業をはじめる上で必要となる資金の一部を補助するしくみです。

補助率は事業費全体の2分の1以内とされており、補助金額の範囲内で、外部資金の調達がない場合には50万円以上100万円以内、外部資金調達がある場合には50万円以上200万円以内とされています。

応募するには申請書類の郵送のほかにもインターネットを通じた電子申請という方法が利用できるところがユニークです。

②補助金や助成金の申請手続き

各都道府県では産業振興センターや中小企業振興公社などに相談窓口を開設しているほか、漫画などで制度のしくみを紹介したパンフレットなどもありますので、申請の手続きそのものは比較的スムーズに進む余地があります。

ただし産業競争力強化法にもとづく特定創業支援事業を受けること、補助事業遂行のために従業員を1名以上新規雇用することなどの条件もありますので、その条件を満たしていることが必要です。

小規模事業者持続化補助金は、経営計画に基づいて実施される販路開拓や業務効率化などの取り組みに対して、原則として50万円を上限に補助金が支給されるしくみです。(補助金についてさらに詳しく知りたい方はこちらへ⇨谷尾和昭

補助率は3分の2と他の補助金と比較しても多めになっているほか、計画作成や販路開拓の実施などにあたって地域の商工会議所からの指導や助言を受けられるのが大きなポイントです。

この場合の販路開拓の取り組みにはマスコミやインターネットを通じた広報宣伝、ネット通販システムの構築、移動販売や出張販売のための車両の購入、店舗改修やレイアウト改良などが含まれます。

この事業は小規模事業者が対象であって、会社やこれに準じる営利法人のほか個人事業主も対象範囲に含まれますが、医師や助産師、特定非営利活動法人、任意団体などは対象外です。

またキャリアアップ助成金は有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者などの非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進する目的で交付されている助成金で、全国にハローワークを擁する厚生労働省の管轄です。

中小企業であれば有期契約労働者を正規雇用労働者に転換、または直接雇用しただけでも1人あたり57万円、特に生産性の向上が認められる場合には72万円までが支給されますので、金額的にはかなり大きなものといえます。

③違反などいくつか気を付けなければならない点がある

ほかに有期契約労働者の基本給の賃金規定を増額改定した場合や、有期契約労働者に対して正規雇用労働者と共通の手当を新たに導入した場合などにも助成金が適用されます。
ここでいう中小企業事業主は飲食店を含む小売業であれば資本金が5000万円以下または常時雇用する労働者が50人以下、サービス業であれば資本金5000万円以下または常時雇用者数が100人以下、卸売業であれば資本金1億円以下または常時雇用者数100人以下となります。

このような補助金や助成金は創業とその後しばらくの経営にとってきわめて有効なものとなりますが、受け入れる際にはいくつか気をつけておいたほうがよいこともあります。

補助金や助成金には国の補助金適正化法などの法令が適用されたり、交付決定書のなかに条件が付与されていたりすることがあるため、法令の規定または条件に違反した場合には、以前の交付決定が取り消されたり、補助金や助成金の返還命令が下されるおそれがあることです。

補助金や助成金には公金が充当されているため、特にこのような違反にはシビアに対応するケースは多いとみられます。

ほかにも最初の申請の段階で事業計画書や収支計画書などを提出させることのほかに、期間の途中で実施状況報告書、期間満了の際には事業報告書の提出を要求することが挙げられます。

これらは補助金の交付決定ともかかわっていますので、もしも未提出のままであれば、同様に交付決定が取り消されたりする場合がありますので、やはり決まりごとはしっかりと守る姿勢がないと交付されてから苦労することがあります。